ロコモ対策!関節や骨を守るために筋肉が必要な理由は?

ロコモティブシンドローム(ロコモ症候群、ロコモ)とは、

 運動器官つまり骨・関節・筋肉の機能が低下して要介護のリスクが高まり始めた状態
 またはそれが進行して要介護になった状態

を指します。

要介護といっても寝たきりというだけではなく、自分一人で歩行が困難な状態(=要支援)も含んでいます。

また、ロコモティブシンドロームではないにしてもその可能性のある「ロコモ予備軍」を含めると日本人のおよそ4割の人が当てはまるといわれています。

ロコモの症状が出る前にも対策を考えておくことが大切

ロコモティブシンドロームは運動器官の疾患による要介護状態、または要介護リスクが高まっている状態です。
「運動器官の疾患による要介護状態」で一番わかりやすいのは「歩けない」という症状です。

歩けない、または歩きにくくなる理由というのも様々です。
自覚症状としては「膝や腰が痛い」「膝が曲がらない」「二足で立っていられない」などが主なところでしょうか。

「そうならないためにも30代、40代からのケアが大切である!」と私は再三訴えています。

「膝が痛い」と思ったらそれは関節に疾患があるわけです。
関節の軟骨が変性している可能性があります。
ですから、軟骨成分を含んだ食物やサプリ、痛みを軽減する成分を含んだサプリなどをおすすめしています。

しかし、よく考えてみると、それはすでに症状が出てしまった後の話ですよね。

ここで考えたいのは、そもそも膝痛が出ないようにするためにどうしたらいいの?ということです。
それを次に書いていきます。
もちろん症状が出てしまったあとにも有効なことですので、参考にしてください。

骨や関節の疾患も筋肉量・筋力低下に起因する

年を重ねるにつれて、筋肉量や筋力の低下は如実に感じますよね。
「重いものが持てなくなった」
「速く歩けなくなった」
などです。
もちろんこれらも筋肉だけが原因の全てではありませんが。

20代の筋肉量や筋力に比べた場合、70代でおよそ50%、80代でおよそ30%にまで低下するといわれています。
高齢になれば重いものを持つ機会も減り、速く歩く必要もなくなりますしね。
運動する機会も減りますのである程度の低下は仕方ないです。

しかし、筋肉量の低下が招く事態はそれだけではありません。
筋肉量や筋力の低下は、骨や関節の疾患の原因になることも少なくないのです。

筋肉量の低下が招く事態1「転倒による骨折」

高齢者が歩行中に転倒することがあります。
体重のバランスが上手く取れなくなっていることで転倒してしまうのです。
また、転倒した際に素早く受け身を取れないので、骨折などの大怪我に繋がることがあります。

骨の丈夫さや関節のしなやかさ、または筋力などの運動器官の総合的な機能低下によって、転倒による骨折が起こります。

人間の基本的な運動(というと少し大げさに思うかもしれませんが)である「立つ」と「歩く」を例に考えてみます。
筋肉量や筋力の低下によって転倒するリスクが如何に高まるかということを説明します。

「立つ」ということの難しさ

「立ち上がる」ではなく「立っている」状態を想像してみてください。
余裕があれば実際に立っていただいた方がわかりやすいかもしれません。

人間の場合は二足で立っています。
カメラの三脚が安定していることを考えると、二足で立つということの難しさがよくわかります。

人間が二足で立っていても倒れないためには、地面との接地面である両足の裏…その上に重心が収まっている必要があります。
足の裏の面積はそんなに大きくはありませんが、人間は自然にこの接地面の真上に重心を収めて立っているのです。

直立の姿勢であればそんなに難しいことはないかもしれません。
むしろ完全な直立時は負担が少なくなるように人体は作られています。

しかし、少し膝を曲げて立つとどうでしょう。
重心が少しずれて不安定になります。
不安定と言っても倒れるほどではないと思います。

なぜ膝を曲げて重心がずれても倒れないかというと、太ももの筋肉が働いているからです。
重心がずれ続けるとそのまま倒れてしまいますが、そうならないように逆向きに筋肉が引っ張ることで重心が著しく接地面の真上から離れないようにしているわけです。

話は少し変わりますが、高齢者の中には腰が曲がっている方もいらっしゃいます。
関節や背筋の機能低下によるものです。

腰が曲がると直立時に比べて、当然、重心が前に寄ります。
そのままだと前に倒れますね。
倒れないようにするために杖を使うわけですが、杖を使わずにそのまま立ち続けようとするとやはり足などの筋肉に力が入ります。

筋肉の動きを意識しながら少しずつ立ち姿を変えていくと、「立つ」というだけでも如何に筋肉が働いているかわかるかと思います。

逆を言えば、筋肉量や筋力が低下したら立つことがより難しくなるわけです。

物理的に考えて「歩く」はもはや神業!?

次に「歩く」についてです。

日本に限らず、世界を見ても二足歩行ロボットはほぼ実用化されていません。
二足歩行が如何に難しいかということです。
その難しさの要因は、重心移動に尽きると言ってもいいのではないでしょうか。

先ほどの「立っている」状態から「歩く」という運動をしてみます。

まず、片足を上げますよね。
この時点で「片足立ち」の状態になります。

「立つ」の難しさについては前の項目で散々書きましたが、接地面積がより減った状態が「片足立ち」です。
しかも、これは単純に接地面積が半分になったということだけではありません。
接地面つまり片足に対して重心は真ん中のままなので、重心が横にずれた状態にもなっています。

その状態で倒れないためには、体側面の筋肉も働くことになります。
無意識の中で、筋肉の働きで横にずれている重心を接地面の真上に持ってこようとしているわけです。

「歩く」ということは前に進むことでもあります。
前に重心を動かすわけですが、これは実は「前に倒れている」のと同じなんですね。
そしてそのまま本当に倒れてしまわないように、倒れる前に上げた片足を地面につけて支えるわけです。

これが「歩く」という運動です。

まとめると、「歩く」という運動は、重心を左右と前に連続して動かして倒れないよう支え続ける運動なのです。
そしてその都度、筋肉が働き続けています。

この絶妙な動きをロボットで再現するのが極めて難しいわけですね。
それだけ人間の体は緻密に作られているのです。

「立つ」も「歩く」も筋肉の働きが重要

以上のように「立つ」も「歩く」も筋肉が相当働いていることがわかります。

逆を言えば、筋肉量や筋力が低下すれば、当然それだけ転倒のリスクが高まります。
転倒とは、緻密な重心移動に対応して支える運動能力の低下によって引き起こされるのです。

少しぐらい転倒しても骨折しないために骨量を維持することはもちろん大切です。
しかし、そもそも転倒しないためには筋肉と筋力の維持もしなければならないのです。

筋肉量の低下が招く事態2「関節痛」

転倒をしないまでも、筋肉量や筋力が低下することで関節への負担は増していきます

例えば、重いものを持ち上げる運動があります。
買い物袋などを想像していただけるとわかりやすいかと思います。

持ち上げるときは、その瞬間に特に力を入れているのがわかります。
あとは持ったままの状態をなるべくラクな姿勢でキープする感じですね。
肘のところにかけるのもそうかもしれません。

ところが、下げるのは難しいです。
もちろん重力に任せて下げるだけなら難しいことはありません。

大事なことは買い物袋の底に入れた卵を割らないで下ろせるかということです。
(そもそも底に入れませんけど)

重力に従って下がっていくものを、そーっと下げるのが難しいということですね。

「歩く」ことは「常に膝に負担をかけ続けている」こと

直立時もそうなのですが、わかりやすいので「歩く」ときのことを考えます。

少し上の方に書きましたが、「歩く」とは「前に倒れている」体を足で支え続ける運動ともいえます。
「前に倒れている」というのは重力によって下がっていくということです。

それを足で支えるわけですから、何も考えないと足にかなりの負担がかかります。
先ほどの卵の話だと、卵は割れてもおかしくないかもしれません。

重力に逆らうには筋肉の力が必要

しかし実際に「歩く」ときは、なるべく負担がかからないように無意識にそーっと足を下ろしているのです。
重力にまかせてドーンと下ろしたら足が痛いですしね。

その「そーっと足を下ろしている」のが筋肉の働きです。
筋肉を使って下ろす速さを調整しているとでもいいますか。

「足を少し痛めたときに階段を下りるのが辛い」という経験がないでしょうか。
坂や階段を下りるときは、上るとき以上に筋肉が繊細に働いています。
急に下りてしまって足に負担がかからないように、ですね。

逆を言えば、筋肉の働きによって足にかかる負担を軽減しているのです。
だから筋力が低下すれば足への負担が増えるわけです。
先にも書いたとおり、それと同時に重心のバランスを調整して転倒を防いでいるのも筋肉の働きです。

階段を下りるときだけではありません。
何気なく平地で歩くその一歩一歩もそうです。

筋力の低下が膝痛に繋がる

以上のように、筋肉量や筋力が低下すると歩くときに足への負担が増えます
歩くときだけではなく、少し大げさな言い方をすると日常生活の全てにおいてです。
もちろん一歩だけならそれは小さな負担ですが、一日に何千歩、何万歩と歩きますからね。

足の裏が痛いというのもそうですが、足への負担とはやはり骨や関節への負担です。

関節の軟骨などは特に骨に比べると柔らかいものですので、負担がかかればその分変性が進みます。

つまり、こうして筋力の低下が、関節の軟骨などの変性の原因の1つとなるわけです。

足というか膝は人体でも下部に位置していますから、より大きい重力(=体重)を支えています。
だから、関節の疾患としても膝痛はより顕著に出るところですね。

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