ロコモティブシンドロームの原因は?
ロコモティブシンドロームとは、運動器官の機能が低下して「要介護状態になっている」もしくは「要介護のリスクが高くなっている」状態のことです。
人体の運動器官は、主に骨・関節・筋肉そしてそれらをまとめる神経です。
自覚症状としては主に膝や腰の「痛み」が分かりやすいかと思います。
曲げたときの痛みや、歩いているときの痛みですね。
膝や腰、あるいは背中などの痛みの直接的な原因は、関節や椎間板の変性であることが多いです。
具体的には、関節の軟骨がすり減って骨などへの負担が大きくなり、痛みが顕在化するということです。
この膝などの「痛み」がロコモティブシンドロームの始まりです。
また、痛みを感じなくても、軟骨の減少は加齢とともに進行していきます。
一般的には、30代や40代から徐々に軟骨が減少していき、50代になるとそれが痛みという形で出てくると言われています。
では、どうしてロコモティブシンドロームになるのか?
そのきっかけになり得る要因をもう少し具体的に書いていきます。
この記事の目次
目次
ロコモティブシンドロームの原因は、骨・関節・筋肉にアリ!
ロコモティブシンドロームの原因は大きくわけて3つあります。
ロコモティブシンドローム=運動器官の機能低下ですから、運動器官に何らかの疾患があるわけです。
人体の運動器官とは大きく分類すると、骨・関節・筋肉ですね。
つまり、ロコモティブシンドロームの原因は主に骨・関節・筋肉にあります。
(他にも脳や脊髄、運動神経なども要因としては考えられます)
人間の体を動かす=運動するためにはこれら3つの器官の連動が必須です。
どれか1つでも機能が低下すれば、当然、思うように体を動かすことはできません。
思うように体を動かすことができなくなると・・・。
運動(大げさなものではなく日々の歩行)をするのが辛くなり、さらに運動機能が低下し・・・。
という悪循環に陥ります。
それがロコモティブシンドロームの進行を早めてしまうわけです。
各原因をもう少し細かく書きます。
1:骨量の低下
骨は体を支えています。
一番分かりやすい疾患は骨折ですね。
骨折をするとその部位を動かすことはもちろん、体を支えるのも困難な状況になりかねません。
大きな衝撃を受けたとき(交通事故など)に骨折をすることがあります。
しかし、年齢を重ねるにつれて小さな衝撃(転倒など)でも骨折するリスクが高まります。
私の祖母も転倒して、腕を骨折したことがあります。
高齢になるとそれだけ骨量が減っていきます。
骨粗しょう症などがそれにあたります。
女性の場合は、閉経後に女性ホルモンのエストロゲンが低下することで、骨粗しょう症になりやすくなるので特に注意が必要です。
骨折はロコモティブシンドロームの大きな原因のひとつです。
ロコモティブシンドロームは、運動機能の低下→運動しなくなる→さらに運動機能の低下…という悪循環によって引き起こされることが多いです。
骨折は運動不足の大きな原因ですからね。
高齢になってから一度骨折をして歩かなくなると、そこからロコモティブシンドロームが加速することがあるわけです。
2:関節の変性
骨と骨をつないでいて滑らかな動きを助けるのが関節です。
ここで書いている関節とは、背骨の間の椎間板や骨をつなぐ靭帯、そして軟骨などを指しています。
硬い骨に支えられている人体が滑らかに曲がるのは関節のおかげですね。
また、骨同士が擦れるのを防ぐことも関節の役割です。
こういった役割がある関節ですから、椎間板や軟骨というのは硬かったら意味がありません。
骨に比べるといくぶん柔らかい部分です。
それゆえに負担をかけ続けていると磨り減ってしまうんですよね。
こうして関節の変性が発症します。
すると「膝が痛い…」となってしまうわけです。
筋肉と違いトレーニングで関節が劇的に良くなることはありません。
また軟骨を作る成分を普段の食事で摂取するのも難しいので、グルコサミンなどのサプリがあるわけですね。
3:筋肉量の低下
人間の体を動かす=運動は筋肉の動きによるものです。
そう考えると、筋肉は運動器官の中でもひときわ重要な役割を果たしていることがわかります。
しかし、いざ膝などの関節痛を発症すると、骨や関節のケアに注意がいきがちです。
そうならないためにも事前に筋肉を鍛えておくことも大切なのです。
例えば、骨折というのはロコモティブシンドロームの大きな要因のひとつです。
高齢になれば転倒などでも骨折をすることがあります。
そして、その転倒の大きな要因となるのが筋肉量の低下です。
つまり、筋肉をある程度鍛えて転倒のリスクを減らすことが、ロコモティブシンドロームの対策に繋がるわけです。
また、運動中(歩行なども含める)の緻密な重心移動に合わせて、各筋肉が働いています。
それによって関節への負担を軽減しています。
ですから、筋肉が十分に働いていない状況だと、関節への負担が増してしまうこともあるわけです。
ロコモティブシンドロームという疾患を考えると、骨や関節の疾患・痛みを思い浮かべるかもしれません。
しかし、骨や関節の疾患・痛みの原因はそもそも筋肉の量や質の低下にある場合も多いのです。
筋肉減少症=サルコペニアとは
サルコペニアという名前を聞いたことがありますか?
これは直訳すると筋肉減少症です。
読んで字のごとく筋肉が減少することですね。
まだ少し定義が曖昧ですが、一般的には
広義としては「筋肉量が低下して、筋力や身体能力が低下している状態」を指しています。
狭義では「『加齢による』筋肉量の低下」のみを指すこともあります。
日本では一般的に「加齢による筋肉量の低下、筋力・身体能力の低下」を指していることが多いです。
高齢社会が進むにつれてますますこのサルコペニアも増えていきます。
そして、サルコペニア=筋力の低下は転倒のリスクへと繋がり、ロコモティブシンドロームの要因となります。
つまり、ロコモティブシンドローム対策のひとつとして、このサルコペニア対策も考えなければならないということです。
膝痛の原因は、軟骨の磨り減り!
腰や膝の関節が痛いというのは、関節の変性(=軟骨の磨り減りなど)が原因です。
では、軟骨が磨り減るとどうして膝痛が発症するのでしょうか。
そもそも軟骨って、骨と骨が滑らかに動くために存在しています。
ひざで言えば、太もも部分の骨と、すねの部分の骨をつなぐ関節がひざで、このひざのところで、太ももの骨についた軟骨とすねの骨についた軟骨が、ツルツルすべるような感じで接しています。
この軟骨同士のツルツルって、半端なくて、氷と氷のツルツルよりも、もっとツルツルしています。
だから、関節部分で骨同士が触れ合っても、我々何にも感じません。
それくらい滑らかにスムーズに動いているわけです。
ところが、この軟骨が退化するとその表面が毛羽立ってきたり、最悪の場合だと一部の軟骨がなくなって骨同士がぶつかったりしてしまいます。
実は軟骨そのものには神経が通っていないので、軟骨そのものが痛いというわけではありません。
しかし、関節がスムーズに動かないために、その刺激が骨の神経を直撃するわけです。
それで、我々は膝痛になってしまうというわけなんです。
関節の軟骨が変性してロコモティブシンドロームになるメカニズム
さて、関節軟骨が変性すると関節が痛む説明をしましたが、そうなると必然的に、関節を動かしたくなくなります。
だって、痛いんですから(汗)。
で、関節を動かさなくなる・・・つまり歩いたり、運動しなくなったりするわけですよね。
そうすると関節周囲の筋力が低下していきます。
関節周囲の筋力が低下すれば、体重を支える力が弱くなるので、その分関節に負担がかかりますよね。
だからますます痛みが増えます。
痛みが増えるから余計に、運動しなくなったり、歩かなくなったりする。
だからその分筋力が弱くなって・・・っていう負のスパイラルになってしまうわけです。
こうして、将来、介護を受けるリスクが高くなって、ロコモティブシンドロームになってしまうわけです。
軟骨は使わないと退化してしまい、ますます膝痛に・・・
それともう一つ、動かなくなる・・・特に歩かなくなることで、ひざの関節の軟骨はかえって減っていってしまうってことも大切です。
関節の軟骨ってスポンジみたいな構造になっていて、そこに関節液がしみこんでいます。
で、圧迫されるとスポンジ(軟骨)が押されて中から関節液が出て行き、解放されると関節液が再び中に入ってくる・・っていうように、動かすたびにこの関節液が出たり入ったりします。
この関節液の出入りがとても大切で、関節液が軟骨に入ってきたり、出て行ったりすることで、軟骨は栄養分をとりこんだり、老廃物を出したりできるわけです。
(骨や筋肉には毛細血管がめぐっているので、血液を通して栄養分・老廃物の出し入れができますが、軟骨には毛細血管が通っていないんで、それができないのです。)
ということは、関節を動かさなくなる・・・ひざで考えれば、歩かなくなることで、軟骨に関節液が出たり入ったりしなくなります。
そうなると軟骨の老廃物と栄養分の交換ができないわけで、軟骨はどんどん退化していってしまうわけですね。
これではいけません。
軟骨を今以上に減らしてしまったら、関節の痛みはもっと酷くなります。
でも、かなり多くの人が、ここで「なるべく安静に」してしまう。
そうなると・・・。
関節が変性する→ひざ痛が原因で動かなくなる→軟骨に刺激がなくなって、軟骨が衰える→関節が変性する→ひざ痛がますますひどくなる。
という悪循環をひたすら繰り返してしまうことになるわけです。
こんな風になっても、やはり介護のリスクが高くなっていきます。ロコモティブシンドロームになってしまうわけですね。